米国経済の見通し

今回は米国のインフレについて考えたいと思います。

 

2017年は先進国・新興国経済が揃って堅調に推移するなか、世界経済の中心である米国においてFedが利上げを進めるものの、インフレ指標が弱く、高成長・低金利で株式フレンドリーな環境下にありました。

一方、2018年に入り1月の株価急伸後、1月末頃から空気が一変。2月公表の米国賃金・インフレ指標の上振れで、米国のインフレ加速懸念が債券市場を圧迫し、株式市場に影響が及んでいる現在です。

 

では、米国のインフレは本当に加速するのでしょうか?

 

筆者の見解は、「Fedの目標である2%への上昇確度は高く、リスクは更なる上振れ方向」というものです。ただし、「2%程度は既に市場で織り込まれている」と考えられます。

Fedインフレ目標は、PCEデフレータ(食料、エネルギーを除く)が前年比+2%の水準にあること、です。一方、2018年1月のデータでは当指標は前年比+1.5%でした。まだ少し距離がありますね。

しかし、イエレン前FRB議長が指摘されていたように、2017年の春以降の当指標の弱さは携帯電話の通信料の値下げなど一時的な要因が重なったためであり、2017年9月以降は平均して前月比+0.2%の伸び(これは前年比+2%以上のポテンシャルがあるということ)を維持していることを踏まえますと、遠からず上昇が見込まれます。また、NY連銀が推計しているCPI(PCED推計に大きく影響するので米国でも大事!)の基調を示すモデルとして、UIG(Underlying Inflation Gauge)という指標がありますが、当指標のPriceデータ(CPIデータを使用)は一貫してPCEDの前年比+2%程度を導く水準を示唆していること、またFullデータ(様々なデータを使用)が更なる大きな上振れを示唆していることから、リスクは上方向にあると考えております。

 

一方、現在の米国10年金利は2.9%前後という水準にありますが、物価連動国債の織り込む期待インフレ率が既にPCEDの前年比+2%程度の水準を示唆していることから、筆者の上記の見解のうち、メインシナリオは織り込み済みということになります。ただし、同時にリスクはインフレ上振れ方向と考えていることから、その見方が正しければ、米国金利は上昇方向にバイアスがあり、金融市場は今後も再びボラタイルな展開が訪れる可能性の方が高い、ということになります。

 

以上の想定に基づき、筆者は株価が上昇するタイミングで株式のエクスポージャーを少しずつ落とし、キャッシュ余力を高める行動に出ております。同時に、金利が低下する局面ではTMVで金利上昇方向へのリスクテイクを行っています。